ゴミと生きている。ゴミに生かされている。  #ゴミ山潜入ルポ6

 

 

ゴミ山をどのように考えているのかを聞いてみた。すると、顔つきが先ほどまでのおだやかな表情から一転した。

 

 

「出資が終わり、雇用ができなくなり、私たちの会社は小さくなった。収入を得ることが難しくなった人びとは、

 一日二食のお米と塩だけで生きている。職が無くなった多くの人は、自転車にかごをつけたトライサイクルでタクシー運転手をして生計を立てている。

(実際に乗ってみたが、五ペソで一本道の入口からゴミ山まで連れて行ってくれる。彼らは一日中、ここを行き来することでその日暮らしの生活費を稼いでいる。)

 一日百ペソで生活している彼らに子どもを学校や病院に行かせるお金はない。ゴミ山があれば、雇用できる。学校にも子どもは行ける。教育を受けさせることができる」

 

 

そう語る彼の眼は、私の表現能力では、形容し難い虚無感と、怒りのようなもので満ちている気がした。

 

最後にこう聞いてみた。

 

「Do you need the garbage mountain?」

 

彼は今までで一番低い声と真剣な表情で、「I need.」とだけ答えた。

 

彼との取材を終えると車で送ってくれることになった。

会社にいた息子さんとそのお子さんとの四人で日本車に乗り込む。運転は息子さんがしてくれた。

 

 

あの一本道を戻る道で、多くの働く人や駆けずり回って遊ぶ子どもたちとすれ違った。窓越しに見る外の光景に、自分と彼らの生きる世界が違いすぎることを想った。

 

助手席で二、三歳の孫を抱いている彼が孫にこういった。

 

▶︎経営者のご子息が送ってくださった。

 

 

「Are you hungry?」、その言葉を聞いた時に。私は、窓の向こうにいた少女と目が合った。

孫を愛おしそうに抱く彼の目に、あの少女はどう映っているのだろう。

 

私は受け入れたくもない現実を目の当たりにしながら、複雑な心境のまま帰路についた。

 

現実はとても矛盾しており、決して一言では片づけられないことを頭では分かっているつもりだったが、私の心は受け入れたくないようだ。胸の中で黒々と渦巻く感情が取れる気がしない。

 

ホテルの近くまで送ってくれた彼らに別れを告げ、また歩く。現実はとても残酷で、凄惨で、苦しかった。

 

しかし、私がどう思おうとも、彼らは確かにそこで生きている。

 

 

▶︎ゴミを運ぶダンプトラック。たまに荷台に子どもが乗っている時がある。

 

 

 

 

 

第四章『ゴミ山の裏側で』

ゴミ山取材最終日となるこの日は、ゴミ山の裏側へと向かった。一本道も三日間歩き続ければ、慣れてしまうものだった。

ゴミ山を正面にすると、右側に緑が広がっている平地があった。

 

 

▶︎ゴミ山の隣に広がる平地。

 

 

雑草が生い茂り、ゴミ山と対照的な世界が広がっている。足元には常にビニール袋やガラスの破片が散乱しており、素足で歩くことは不可能だ。

▶︎子どもたちがバスケットボールをしている。

 

少し歩くと、右足首がチクリと痛んだ。何かに刺されかと思い、すぐに見るとダニに噛まれていた。まだ噛み続けているダニを爪で潰し、払い落とす。

先日のゴミ山取材でドブまみれになった靴を捨ててしまったため、今日はサンダルでの取材だった。完全に油断をしていた。

 

サンダルはさすがに能天気すぎたと反省していると、今度は左足の親指に痛みが走った。

今度はアリに噛まれていた。ダニよりもアリの方が痛い。痺れるような痛さだった。

日本のアリと比べると、セブのアリはずいぶんと顎がでかい。

 

とにかく、ダニよりもアリの方が痛かったのが衝撃的だった。

 

それは、サンダルで来た私に対しての自然からの洗礼だった。

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